はじめに

旅行会社の団体ツアーや学校行事、高齢者の送迎など、さまざまな場面で活躍する「貸切バス」。
この事業を始めるためには、国土交通省から「一般貸切旅客自動車運送事業」の許可を受ける必要があります。

本記事では、許可を取得するために必要な要件の概要をわかりやすく解説します!

引用元:北海道運輸局

貸切バス事業とは?

一般貸切旅客自動車運送事業とは、あらかじめ契約を結んだ団体やグループに対して、運送を提供するバス事業のことを指します。
定期運行を行わず、特定の利用者の求めに応じて、特定の時間・区間を運行するのが特徴です。
このような貸切バスを営業として運行するためには、「道路運送法」に基づき、地方運輸局に申請を行い、許可を得る必要があります。

審査基準の概要

貸切バス事業を始めるには、国土交通省の許可を受けることが不可欠です。
しかし、許可取得には単なる申請書提出だけでなく、事業者としての体制・設備・資金・人員など、多面的な条件を満たす必要があります。

①営業所・休憩仮眠施設の要件

まずは事業の本拠地となる営業所についてです。
許可を受けるには、以下の条件を満たす必要があります。

●営業所が申請者の名義で使用できる正当な権利(所有または賃貸契約等)に基づき確保されていること。
●その営業所が、旅客自動車運送事業の実施に支障がない状態にあること。


さらに、運転者の労働条件や安全確保の観点から、休憩または仮眠のための施設を確保しなければなりません。
休憩・仮眠施設についても、営業所と同様に権原に基づく使用が必要とされており、施設の場所や設備状況なども審査されることになります。

②車庫の要件

車庫についても、営業所と同様に使用権限を有していることが前提となります。
車庫は、安全な出入りが可能であり、事業用自動車を支障なく駐車できる広さや構造を持っている必要があります。
加えて、以下の点も審査の対象です。

●車両出入口が公道と直接接続されており、出入りの際に第三者に危険や迷惑を及ぼさない構造となっていること。
●営業所と車庫の距離が近接しており、日常の点呼・管理などに支障がない体制であること。


このように、「安全な運行管理が実施できる状態であるかどうか」が評価されます。

③使用する自動車に関する要件

申請時点で、運行に使用する車両を3台保有(もしくは導入予定)している必要があります。
その際、以下の点が確認されます。

●申請者名義または事業に使用可能な契約上の車両であること(所有、リース等)。
●自動車の整備管理が適切に行える体制であること


整備費に関しては、年式や走行距離に応じた目安が示されており、それに基づいて整備予算が十分に確保されているかどうかも評価されます。

④整備管理体制の要件

整備管理体制については、次のような基準が設けられています。

整備管理者(自動車の点検・整備の計画を立てたり、その実施状況を管理したりする責任者で、道路運送車両法に基づく資格を有している者)が選任されていること。
●自動車の点検整備が法令に基づき計画的に行われていること。

⑤運行管理体制の要件

安全運行を実施するためには、運行管理者の選任が必要です。
審査基準では以下の点が確認されます。

運行管理者(運転者の点呼や健康管理、運行指示などを行い、安全運行を管理する責任者で、一定の実務経験や講習の受講など、資格要件を満たす者)が選任されていること。
●点呼、運行指示、健康管理、勤務状況の把握など、業務が適切に実施できる体制であること。


実情に応じた無理のない体制を敷くことができるかどうかが審査対象となります。

⑥運転者の確保状況

申請者は、事業開始にあたって運転者を確保していることが求められます。
審査時には以下のような点がチェックされます。

●運転者が確保済みであるか、採用計画が具体的に示されていること。
●雇用契約状況などが明確であること。

⑦資金計画の妥当性

事業を安定的に継続するためには、適切な資金計画が必要です。
審査では、以下の観点でチェックされます。

●車両導入費、施設整備費、運転資金(賃金、整備費、燃料費等)を含めた予算が見積もられていること。
●実際にその資金を保有していること(通帳、融資契約書等)。

収支計画については、現実的な運行本数、運賃収入、人件費等に基づいて算定されているかが問われます。

⑧法令遵守体制・欠格事由の確認

最後に、事業者自身やその役員等が、過去に重大な違反歴がないかどうかも審査されます。
また、以下のような事項が確認されます。

●欠格要件に該当しないこと(例:過去に許可取消処分を受けてから5年未満、反社会的勢力との関係など)
●法令遵守に対する理解と具体的な対応体制が構築されていること

許可申請時には、事業計画、営業所・車庫の図面、車両リスト、整備管理体制、資金計画、人員体制など、細かい項目にわたって確認書類が必要になります。

国土交通省は、貸切バスの許可申請にあたって、事業者が「旅客の安全確保に必要な体制を備えていること」を重視しています。そのため、審査では以下の項目に沿って評価が行われます。

許可申請の流れ

許可申請の手続きは、以下のステップに沿って行われます。

事前準備(必要な体制・施設・資金の確保)

まず、営業所・車庫・休憩仮眠施設などの拠点を確保し、使用権限(登記簿、賃貸借契約書など)を整えます。
次に、整備管理者や運行管理者の選任予定者を決め、体制や職務内容を整理しておきます。必要に応じて、運転者の採用計画や資金の確保(通帳や融資資料)も用意します。
この段階で、審査基準に適合しているかチェックすることが重要です。

STEP1

管轄運輸局への相談(任意)

国土交通省または地方運輸局では、事前相談を推奨している場合があります。
とくに初めて申請する場合は、営業所や車庫の場所の適否、整備体制の確認、資金計画の妥当性などについて相談することで、書類不備や要件未達を防ぐことができます。

STEP2

申請書類の作成・提出

次に、許可申請書類を作成して提出します。
主な提出書類は以下のとおりです。
●一般貸切旅客自動車運送事業経営許可申請書
●営業所・車庫・休憩施設の概要図および権利証明書類
●整備管理体制・運行管理体制の概要書
●車両の仕様・契約状況の書類
●資金計画書・貸借対照表・損益計算書
●運転者の雇用状況(または確保予定)

提出先は、営業所所在地を管轄する運輸支局です。

STEP3

審査の実施

書類提出後、運輸局で審査が行われます(およそ4か月)。
審査内容は主に以下のとおりです。
●書類内容と審査基準の適合性の確認
●必要に応じて、営業所や車庫への実地検査
●整備・運行管理体制や資金の実質的裏付けの有無
●欠格事由の確認(役員・関係者の法令違反歴など)

場合によっては、追加資料の提出や説明を求められることがあります。

STEP4

許可の通知・許可証の交付

審査を経過すれば、正式に「一般貸切旅客自動車運送事業経営許可書」が交付されます。
ここで初めて、法的に貸切バス事業を行う資格を得ることができます。
※許可後、別途「運輸開始届」の提出や、車両の登録・保険加入などの実務的手続きも必要です。

STEP5

申請から許可交付までは、4か月程度かかるのが一般的です。ただし、書類不備や体制未整備がある場合はそれ以上かかることもあります。
そのため、申請準備は早めに取りかかり、必要な体制と資金を確保したうえで進めることが成功のポイントです。

最後に

今回は、一般貸切旅客自動車運送事業について解説させていただきました。
貸切バス事業を始めるには、「設備」や「人材」だけでなく、「安全な運行体制」と「継続的に維持できる資金力」をトータルで備えていることが求められます。

立ち上げ後は、観光の交通手段の柱として、国土交通省や経産省より様々な補助金が出ます。
例:令和7年度交通DX・GXによる経営改善支援事業等補助金

また、運送業を事業拡大していく点で、介護タクシーを始めることも可能です。

地域福祉と交通の架け橋に~“福祉輸送限定タクシー”の仕組みと開業手続きまとめ~

はじめに 現在の日本社会は、世界に類を見ないスピードで超高齢社会へと突入しています。そんな中、「移動が困難な方」の通院・買い物・役所への手続き等、日常生活におけ…


このような点についても許認可と補助金の専門家である行政書士ご相談いただければ、丁寧かつ慎重にヒアリングを行った上で、申請から許可取得まで手厚くサポートさせていただきます!

Information

はなまる行政書士事務所【料金体系】
一般貸切旅客自動車運送事業許可申請

300,000円~

投稿者プロフィール

はなまる行政書士事務所 本間隆史
はなまる行政書士事務所 本間隆史はなまる行政書士事務所 代表
補助金の申請は、はなまる行政書士事務所にお任せください。補助金申請サポート200件以上、実績があります。相談は無料です、お気軽にご相談ください!

Follow me!